保育ニュースまとめブログ

保育に関連するニュースや記事をまとめたブログです。保育士さんや幼稚園教諭さん、子育て中の保護者の皆さん、保育に関心をお持ちの方々にぜひ読んでいただきたいです。

<引き継ごう 昭和の知恵と技> 手作りおもちゃ

 「ギーコギーコ、トントントン」愛知県日進市にある工作教室「NPO法人海賊船」の教室ほどの大きさの部屋で、小中学生ら15人がのこぎりをひき、金づちでたたきます。

 「お昼だよ。手を休めてご飯にしよう」と理事長の川合英治さん(71)が呼び掛けても、多くの子どもたちが夢中で作業を続けます。

 作るものは一人ひとり違います。木の板を丸く切って竹ぐしを刺したこま、薄い木を重ね合わせた扇子、木の円盤をサッカーのようにゴールに入れるゲーム盤…。長さがふぞろいだったり、曲がっていたりして、随所に手作りらしさが出ています。

 「歯車がうまく回らないんです。どうしたらいいですか」と、手動扇風機を作っていた女の子に質問されると、川合さんは「歯車で回すのは難しいかも。もっと簡単に回す方法を考えて」。自主性や創造性をはぐくみたいとの願いで作った教室です。「試行錯誤が子どもの糧になるんです。あれをしろ、これをしろとは言いません」

 教室を開いた原点は少年時代にあります。昭和20年代、生まれ育った名古屋市内には自然があり、畑や小川などを駆け回って思いっきり遊びました。遊びで必要なものは自分で作りました。

 近所の年上の友達が遊んでいた竹馬を見て、自分で竹を切り出して制作。犬を飼う時にはミカン箱から犬小屋を作りました。不格好でも手作りすると達成感がありました。失敗しても、なぜうまくいかなかったかを考え、やり直して工夫します。

 「昭和の時代には物がなかったけど、手と頭を使って作る、生きる力があった。それを子どもたちに伝えたかった」と振り返ります。

 大学を卒業後、現代アートの作家をしながら、幼稚園教諭や保育士らに工作を教えました。知人とともに教室を立ち上げたのは昭和52(1977)年。現在まで約40年間、毎週末に開いています。

 教室を開いて感じたのは、「場を与えてあげれば子どもは夢中になる」こと。自分の世代とは違って、今の子には遊ぶ場が少なく、自由にものを作ることもできません。窮屈そうだなと感じていましたが、教室に来た子に自由に作らせてみると、発想や熱意に驚くこともしばしば。手動の木製肩たたき機や、自分が乗れるボートを作った子もいます。

 ただ、手作りを通して想像の翼を広げてほしいという思いとは逆に、「時代は、ますます手と頭を使わないようになってきた」と感じます。欲しいものがあればすぐに買え、失敗しないようにやり方をすぐにスマホで検索できるからです。そんな生活では、工夫や考える力はほとんど育たない。実際、「作りたいものがない」と言う子どもたちが増えています。

 教室には、アフリカや南米など発展途上国で川合さんが集めたおもちゃを展示しています。物がない戦後の日本と同じ状況にあり、材料は空き瓶のふたや空き缶、廃タイヤ、新聞紙など、日本では捨てられていくものばかり。それらを器用に組み合わせ人形や車のおもちゃを作っています。日本の子どもたちに、想像力を養うきっかけにしてほしいと集めたものです。

 川合さんは「ものはないけれど、それを工夫で補う想像力は生きていく上でとても役に立つと思う。そんな力をこれからも伝えていきたい」と話します。