100年カンパニーの知恵 コトブキ(東京都)/下 屋外表示と遊具、展開
人々の幸せ願い公共空間をにぎやかに
1979年、深澤朝幸社長の後を弟の重幸氏が継ぎました。この年、東京のベッドタウンとして計画された多摩ニュータウンで、コトブキは地図や案内を表示するサインの整備を手がけます。それまで屋外に置かれたサインは現場ごとの特注だったため、コストが高く、一般化されていませんでした。多摩ニュータウンの整備を機に、同社は「コミュニティサイン」と名付けた規格製品の開発を開始。81年、「ベーシックコア」を発表しました。
△出典:毎日新聞
一方、子どものための新しい屋外遊具「コミュニティ遊具」も登場しました。ロープを使ったジャングルジム「ザイルクライミング」などは今もロングラン商品です。定番の「鉄棒・ブランコ・すべり台」以外は公共の公園になかった時代、パイオニア企業としてそれまで規格になかった遊具を作り、広めるためにキャンペーンも行いました。サインと遊具はコトブキの新しい柱になりました。
現在の社長は創業者・幸也氏の三男である光幸氏の長男、幸郎氏。2010年、光幸氏は「コトブキホールディングス」を設立し、サインや遊具を含むタウンスケープを中心とした「コトブキ」、劇場椅子やスタジアムシートといった室内家具を中心とした「コトブキシーティング」に分社化しました。
若手社長として12年に就任した幸郎氏は「100年前、創業者はなぜじゅうたんを輸入したかとか、社名の由来とか、全く分からないんです」と笑います。「今は物を作るだけではすまない時代になっているので、ソフトウエア事業なども手がけていますが、ハードウエアが主力であることは変わりません。『子どもの遊びとは』といった社会学的なアプローチのプレゼンをしたいと言ってくれる営業マンが全国にいる強みを生かしながら、新しい展開をしていきたい」と次の100年への抱負を語りました。