保育施設不足が一朝一夕を打開できない現状の問題点
日本中に保育所の不足を痛感させた、インターネット上への《保育園落ちた日本死ね!》という投稿ですが、そもそも保育園と幼稚園はどう違うのでしょうか。出生率の低下で子どもの数が減少しているのに、なぜ待機児童数(保育園不足)は減らないのか、という素朴な疑問が湧きます。
管轄省庁の違いと労働力不足
「保育園は受け入れ対象年齢が0歳児から、幼稚園は3歳児からです。つまり、出産後にすぐ働かなければならない母親は、保育園を希望するわけです。対する幼稚園は、小学校入学前児童の“教育施設”(管轄:文科省)にあたります。保育園(保育所:認可、認可外)は、乳幼児を保護者に代わって預かる“児童福祉施設”(同:厚労省)なのです。幼稚園には教諭免許(先生)が必要であり、保育園は保育士(国家試験)という資格を得るという違いがあります。ここに省庁間のセクショナリズムや、法律の壁が存在しているのです」(教育アナリスト)
保育園不足の背景には、これ以外にもあります。子育てをしながら働く女性が増えたことや、離婚の増加により一人親の家庭が増えたことが挙げられまです。ですが、見落とせないのは保育士不足です。多くの雑務からモンスターペアレンツのクレーム対処まで、責任の重さに比べて給与の低さなどから離職者が多いです。これは、介護業界と同じ構図です。公私立間の格差も大きいです。
「厚労省の『平成26年度の賃金構造基本統計調査』によると、全国の保育士の平均年収は316万7,000円(平均年齢:34.8歳)。一方公立の場合は、537万8,278円(同44歳:東京某区『平成26年度職員の給与の状況』)と、年間で1.7倍(約200万円)の開きがあります」(同)
公立保育園勤務者は地方公務員にあたる
給与の差の原因は、待遇と復職の差に出ているといいます。
「公立と私立の保育士の初任給に大きな差はありません。ですが、公立の保育士の場合は地方公務員であるため、正規雇用なら育児休業の取得が徹底されています。そのため、新卒から出産育児を経て、長く働く職員が多いため、年功序列で給与は増えていく。一方で、私立の場合は、出産や子育てによる離職が多く、平均年齢は10歳近い差が出てくる。復職の有無の差が、賃金の差として現れているわけです」(同)
現在は待遇がよい公立保育園も、国策によって保育所の民営化が自治体裁量で進むと、変わる可能性が大きいです。いずれにしても、少子化であるのに児童福祉施設が足りないという現状は、一朝一夕では打破できそうにない問題なのです。
《保育園落ちた日本死ね!》の騒動の際に騒いでいた政治家たちは、いまもこの問題にちゃんと取り組んでいるのでしょうか。