保育ニュースまとめブログ

保育に関連するニュースや記事をまとめたブログです。保育士さんや幼稚園教諭さん、子育て中の保護者の皆さん、保育に関心をお持ちの方々にぜひ読んでいただきたいです。

待機児童対策 保育士「実態だけでも理解を」

 昨年4月、保育園に入れない「待機児童」の数が625人と、全国ワースト2位を記録した千葉県船橋市。同市に住む保育士の女性(35)は今春、第3子となる男児(5ヶ月)を保育園に預けて職場復帰を目指したが、市からは「待機」の判定を受けました。保育士の子どもは優先的に入園できるはずでしたが、船橋市の優遇条件は、原則市内の勤務者のみ。女性は隣の市川市の保育園に勤めているため、条件から外れました。

 女性の勤務先では、今後さらに保育士2人が産休に入ります。勤務先では人手不足からゼロ歳児の入園募集を停止しました。女性の保育系短大時代の同級生は10人いましたが、うち7人が出産を機に保育士をやめています。

 

「自治体の限界」

 女性は「保育士は長時間勤務が常態化して激務ですが、月10万円台の給与で働く保育士仲間もいる。産休後に転職を考えるのは自然の流れ」と語ります。船橋市のシングルマザーの女性(24)も、1歳2カ月の男児の入園希望が「待機」となり、申請から9カ月が過ぎました。離婚後に実家に戻ったことで母子家庭扱いされなかったのが主因です。女性は「月5万円の保育料を払って無認可保育所に預けていますが、飲食店のパート代から保育料を差し引くと、手元には数万円しか残らない」と語ります。

もちろん、船橋市も手をこまねいてはいません。昨年6月に「待機児童解消緊急アクション」を立ち上げ、市の単独事業として保育士給与の加算などを実施。保育士を確保し、今年4月の待機児童数は203人と前年比68%も減少させました。

 しかし、今度は高給目当てに近隣市からの保育士の流入が増え千葉市は保育士不足に陥りました。船橋市の関係者は「自治体で調整できるレベルの限界」と語ります。

 子育て政策の中でも、待機児童の解消は与野党参院選で力を入れる分野です。昨年の待機児童数は前年比1,796人増の2万3,167人(昨年4月1日時点)で、5年ぶりに増加。2月には「保育園落ちた日本死ね!」と書き込んだ匿名ブログが話題を呼びました。

 自民党参院選で、保育の受け皿を50万人分の整備を実現したうえで、保育士の月額約6千円アップやベテラン保育士の給与増額などを訴えます。民進党も公約に「保育士の月給5万円引き上げ」を明記しました。

 ただ、自民党の待遇改善策には約1千億円程度の財源が必要です。稲田朋美政調会長は、延期した消費税率10%引き上げの影響はないとしたうえで「アベノミクスの果実と社会保障費の見直しで(財源を)捻出する」と語るが、具体的な財源確保策には言及しません。

 さらに自民党の有力な支持団体「日本保育推進連盟」などの影響力もあり、保育園の新規参入が簡単に進まない現状もあります。平成12年に保育園経営への株式会社参入が可能になりましたが、15年たっても全体の3.9%(平成27年4月現在、厚生労働省調べ。有限会社含む)にとどまっています。

 

月給格差11万円

 一方、民進党の「月額5万円」には約2,770億円が必要ですが、財源は「公共事業の削減と法人関係所得の改廃などで確保」(細野豪志・元民主党政調会長)と語るのみ。参院選では赤字国債を充当する案まで口にします。

 そもそも保育士の月給は全職種平均に比べ約11万円も安い約22万円にとどまっており、自民、民進両党の賃上げ策は焼け石に水でしかありません。与野党増税延期を認めたことで、抜本改革への道筋はさらに遠くなったといえます。

 船橋市の保育士の女性は「保育士は子どもの命を預かるだけでなく、最近は親の激しいクレーム処理にも携わる激務。せめて実態だけでも、政治家の皆さんに分かっていただきたい」と遠い目で語りました。