保育ニュースまとめブログ

保育に関連するニュースや記事をまとめたブログです。保育士さんや幼稚園教諭さん、子育て中の保護者の皆さん、保育に関心をお持ちの方々にぜひ読んでいただきたいです。

学校の教室があまっている。メリットの多い余裕教室の保育所転換が進まない理由は役所の論理か?

あまっている教室の保育所への再利用は進んでいない。

 少子化の進展により児童生徒数が減少し、将来にわたって恒久的に使用されることがないと見込まれる小中学校の教室が増加しています。文部科学省の2013年の調査によると、このような余裕教室は全国に64,555室あります。同省ではこの余裕教室について「学校教育に支障がない範囲内で、地域の実情や需要に応じて積極的に活用していくことが望ましい」としており、余裕教室の大部分が特別教室などのその学校の施設として使われていますが、約3,900室は放課後児童クラブや地域防災用の備蓄倉庫、特別支援学校など当該学校以外の施設として使われています。
 このような状況を知ると、この余裕施設を保育所に転用できないかというアイデアが出てくるのは当然のことです。学校の余裕施設や敷地の一部を保育所へ転用すれば保育所の新設は比較的短期間で可能であるため、自治体が社会問題化している待機児童問題に対応する方法として有効ではないかと思いますが、学校の保育園化はそれほどは進んでいません。余裕教室のうち保育所に転換したのは、学校外の施設に転用した全例のうち、わずか1.3%にも達していないのが現状です。

(西品川保育園を三木小学校に、中延保育園を中延小学校に開設した品川区のホームページから引用)

役所の縦割り行政が進まない理由か?

 転用が進まない理由についてはまだ十分な研究はありません。しかしまず思いつくのは自治体で小中学校を所轄する教育委員会と、保育所を所轄する担当部局が異なっている縦割り組織になっていることが様々に影響しているのではないかということです。

 文科省が余裕教室を利用して保育所を設置した自治体の教育委員会と保育担当部局に対して行ったアンケート調査があります。そのなかで、余裕教室から保育所の転換の課題を問うた質問に対しては、教育委員会側からは「管理責任区分が不明確なところがある 」「財産区分の変更や財産処分に関する事務手続きが負担」 などの役所の論理に基づく課題があげられているのが目につきます。しかしこれと同じ回答を課題としてあげた保育担当部局の数は、教育委員会の半分にも達していません。つまり、同じ課題にたいして教育委員会の方が保育部局より、より負担を感じているということです。

これをどう評価するか決め手となるデータはありませんが、ひとつの見方としては「待機児童問題を差し迫った問題と考える保育部局と、自分たちの問題ではないと考える教育委員会」という図式もありそうです。もちろん、理由はこれだけではなく「1、2階に余裕教室がない」「保護者や地域住民の理解が困難」などの理由もあげられていますので、乗り越えなければならない障壁は多いのは事実です。

柔軟性のある制度を作ることがこれからの社会のカギ

 しかし、同じアンケートで、学校に保育所を作ったことによって得られたメリットとして「日常生活や行事で双方の交流が増え、児童に乳幼児への興味や思いやりの心が育つ」「保育園と小学校の連携事業が本格的に実践できる」 「交流が深まることで就学への不安が少なくなり、安心して入学できるようになる」 「待機児童対策における緊急的課題に短期間で対応することができた」 などの肯定的な回答もよせられており、この方法には大きな可能性を感じます。
 深刻化する待機児童問題への解決策として、新たに用地を取得する必要がない保育所の整備は有力な方法であることは間違いありません。保育所にかぎらず余裕施設を柔軟に転用する制度整備はこれからの社会にとって非常に重要な政策となるはずです。