待機児童と政府の補助金について
待機児童問題が起きるのは単純な理由で、それは「今の認可保育園に入園すると経済的に圧倒的に有利だから」に尽きます。保育園に子どもを預けるとお母さんは外で働けるので家計が助かります。でも、それは保育料が安いからであって、保育料がお母さんのパート収入より高かったらほとんどの人は預けないでしょう。
保育料の仕組みが複雑で自治体によって金額も違うので整理しにくいのですが、ここでは政策の方向性さえわかればいいので理解の助けのために数字を一つに絞ります。現行の保育園の仕組みでは、表1のようになります。
△出典:BLOGS
本当は1人に10万円もかかる「至れり尽くせり」のサービスを、たったの2万円で受けられるのですね。これは政府が8万円を保育園に支払っているからです。つまり、我々の税金ですね。
保育園に入れるとお母さんはパートに出ることも可能になるので、パートでの月収が仮に8万円だとすると、家計収支は6万円もプラスになります。それに比べ、保育園に入れられない人は自宅で保育するため、外で収入を得られないので、家計収支は1円も増えません。
普通の家庭で月6万円の違いは大きいので、大抵の人は保育園に入れたいと思うでしょう。待機児童が増えるのは当たり前ですね。この表を見れば、保育園に落ちたお母さんが「死ね」と言いたくなるのもわかりますよね。なぜなら、他のお母さんには政府補助金の8万円が下りるのに、自分はその恩恵を受けられないのですから。
では、この補助金をやめればいいのでしょうか。今まで保育園に対してだけ、1人あたり8万円を払ってたものをゼロにして、仮に未就学児を持つ親全員に5万円を配る「保育手当」を創設するとどうなるのでしょうか。これが表2です。
△出典:BLOGS
これを見ると保育園に預けている人は保育料が10万円なので、パートで8万円稼いでも赤字です。ただ、保育手当5万円があるから家計収支はプラス3万円。一方、自宅保育の人は保育手当がそのまま手に入ってプラス5万円。ただし、自宅保育も経費がかかるので、そんなに不公平でもなさそうです。
必要な財政負担はこれまで保育園児にだけ払っていた8万円をやめて、全員に5万円を配る分だけです。この表2を見たら、保育園に入れたがるお母さんは激減するでしょう。「需要減により待機児童を解消する」というと、なんだか福祉を後退させたように感じますけど、全員の家計がプラスになるのでむしろ公平になったのではないでしょうか。
「お金持ちにも保育手当を配るのはいかがなものか」などと言っていると何も進みません。むしろ、そういう格差対策は所得税などで調整すべき課題であり、子ども1人にかかる手間を差別していいとは思いません。問題は、何故どの政党もの提案をしないのか、というところにあると思います。