しんどさ笑いに 男性保育士グループ劇創作 京都
少子化対策の重要性が叫ばれながら待機児童の問題が一向に解消されない中、京都市の男性保育士グループ「ONC」が、保育園を取り巻く状況を寸劇や歌にしてイベントなどで披露しています。保育士不足など深刻なテーマを扱いながらも、「笑い」を盛り込むのが特徴。「現場で起こっていることに少しでも興味を持ってほしい」と考えています。
厚生労働省は今年3月、入所を希望しながら入れない待機児童が公式発表(昨年4月1日現在)の約2万3,000人に加え、潜在的に約6万人いると明らかにしました。保育士不足が要因で、参院選では各党が保育所の増設や保育士の月給引き上げなどを公約に掲げます。
京都市左京区にある民間の認可保育所「朱(あか)い実保育園」で5月中旬、開園50周年記念イベントがありました。舞台で保育士が1人で多くの子どもたちの面倒を見ています。子どもを迎えに来た保護者が「今日は昼ご飯をちゃんと食べてましたか?」「これはうちの子が作った作品ですか?」と次々と話しかけます。だが、保育士はけんかの仲裁などに追われて上の空。「はいはい。作品ですけど何か」と、とんちんかんな返答をすると、笑いが起こりました。
演じたのは、この保育園に勤務する25〜35歳の男性保育士4人。2013年春にメーデー関連のイベントに参加して斉藤和義さんのヒット曲「ずっと好きだった」を「ずっと働きたいんだ」に替えて歌ったのが始まりです。
2014年度から人手不足の深刻さや理想的な保育環境のあり方、自園での給食調理の重要性などをテーマに、これまで約5分の寸劇10本以上を制作してきました。
メンバーの1人で保育士6年目の下條拓也さん(30)は「仕事の魅力や責任の重さが年を追うごとに深く分かってきた」。でも、保育士の月給は全産業平均より約10万円安いです。下條さんは仕事の意義を感じる一方で、「給与明細を見るたびに、保育士って何なんだろうなと思う」といいます。
保育士の確保や待遇を改善して働く環境を整えることは、子どもにとっても大切−−というのがグループの信念。下條さんは「保育士たちが社会的使命を感じながら懸命に働いている姿を知り、共感の輪が広がればうれしい」と、寸劇に思いを込めています。ONCの活動はFacebookで紹介しています。